クレームの裏側にあるもの

ホームページのプロフィールを見て、クレーム対応に興味があるというお話をいくつか伺いましたので、少し書いてみようかと思います。

 

私はオンライン旅行予約サイトでカスタマーサービス部のトレーニングマネージャーをしていました。
クレーム対応はいくつかポイントがありますが、
一番大切なことは「10のお詫びより1の共感」と研修で伝えていました。

勤め先はメール対応がほとんだったため、いわゆるイメージコンサルティング上のNon Verbal Communication(表情、声、仕草など)が見えないし使えない状態。
場合によっては1、2行のメールから、お客様の真意を掴み、ど真ん中の返信をお返ししなければなりません。
非常に厳しい言葉があったり、お詫びや補償を提示しても納得されない時は、スタッフも疲弊してしまいます。

 

「どうしてこんなにしつこいの!」

「このお客様、性格に問題ありじゃない?」

 

スタッフも人間なので、「共感」なんてできないこともあります。
そんな時、クレーム対応の書籍で心に残ったエピソードを良くお話したものです。

 

老夫婦が旅館に宿泊。夕食は部屋食をお願いしたのに手配ができておりませんでした。
担当は丁寧にお詫びして食堂のビュッフェをご案内しますが、ご主人が大変ご立腹、「もう夕食なんていらない!」と怒鳴り、なんと菓子パンを買ってお部屋で召し上がりました。

「なんて頑固で意地悪な人だろう」とスタッフは思いました。しかし、マネージャーがゆっくりお話を聞くと、実はご主人が長く尽くしてくれた奥様への感謝のために予約した旅行で、しかも奥様は足が悪くビュッフェでは周りにも迷惑をかけてしまう。そのため、ゆっくりしてもらおうと部屋食にしたのでした。

 

なぜ、そこまでお怒りになられたのか。お気持ち分かりますよね。

 

また、厳密にはクレームではありませんが、勤め先でこんなことがありました。

オーストラリアを旅行して帰って来られたお客様が傘をツアー中に忘れたので探してほしいと連絡をくださいました。

傘?それも普通の折り畳み傘です。

普通は現地の連絡先をお知らせし、ご自身でやり取りしてもらいます。しかしながら、後輩のスタッフは現地に何度も連絡し探して差し上げました。結局、傘は見つからなかったのですが、親身になって対応したスタッフにお客様からお礼の言葉が届きました。

 

「これは叔母の形見の傘でした。自分は全く贅沢せず私たちのために尽くしてくれた叔母。
残念ながら亡くなってしまいましたが、一緒にオーストラリアに連れて行きたかったのです。」

 

クレーム対応には何よりも「共感」が必要です。まずは技能より相手を思うハート。
もし何かにこだわり難しいお客様がいらして「共感なんてとても持てない!」と思った時、
その裏側に何かがあるのかもしれないと思ってみてください。